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 コロナ第二波
投稿:長野央希
欧州では、新型コロナの第二波が押し寄せている模様です。
スペインでもマドリードを中心に流行を見せており、スコットランドでは飲食店の営業制限が再開されております。アイルランドでは再封鎖が行われたとのこと。北欧のスウェーデンでも、死者の増加に対して歯止めがきかないような状況のようです。米国では感染者数の増加、死者の増加に対して、さして有効な手立てが取れているのか判然としませんし、これからの大統領選などによって感染がどのように波及拡大するのか注視していく必要があります。インドでも感染者数は増加の一途をたどり、依然として世界規模で新型コロナの感染は終息に向かっている状況とは程遠いと言えます。
ただし、コロナウイルス自体は、元々、風邪を引き起こす代表的なウイルスであり、新型コロナの第二波においては重症者が第一波の時と同様に続出し、死者が増加の一途をたどるのかは、経過を見なければ分かりません。
コロナウイルスはインフルエンザウイルスと同様に変異をきたしやすいものと推定されますので、変異を繰り返すことで、病原性がどうなるのか?
これだけグローバル化した世界であれば、確実に日本でも近日中には第二波、第三波が到来するであろうことは間違いないでしょう。
インフルエンザ時期での新型コロナの動向、合併した場合の重症化率など、未知数なことも多いため、我々医療者も最大限の注意を払っていかねばなりません。そして、今後の新型コロナウイルスが、どこまで恐れる必要があるのかも見極めていかねばなりません。無責任に、コロナは無害であるという情報を発信することは厳に差し控えねばなりませんが、いたずらに恐怖心をあおることも慎むべきと思います。
行政は、感染の研究機関や医療者の協力のもとで、より正確な科学的根拠を示しつつ、恐れるべきものは恐れ、そうでないのであれば、極力以前の様な日常生活を送るように指導をしていく必要があると考えます。
そして、少なくとも市民レベルでは、日々の手洗いをきっちり行い、外出時のマスク着用や、口鼻腔内の乾燥予防などを心がけていくことが重要と言えます。

2020年10月21日(水)

 ワクチンA
投稿:長野央希
(続き)
実際に、18世紀末に、エドワード・ジェンナーが牛痘を開始して以降、天然痘ウイルスの絶滅に成功しています。
国内で言えば、四種混合(ジフテリア、百日咳、破傷風、不活化ポリオ)ワクチンなどの恩恵を受けているといえるでしょう。
そして、毎年、季節性インフルエンザの予防接種を受けられる方も多いと思いますが、これによって、インフルエンザを完全に予防できるわけではありません。ただ、感染した場合にも、症状を軽減するとともに、インフルエンザ感染後に二次的に起きる細菌性肺炎の合併を予防する効果が期待できると言えます。
尚、韓国で17歳の健常な方が、インフルエンザのワクチンを接種後、二日目に亡くなられたというニュースを見ました。原因などは現在調査中ですので、詳細が分からず、コメントは差し控えざるを得ませんが、確かに、ワクチンにおいて、副反応(いわゆる副作用)のないものは残念ながらないのも事実であり、いかに安全なワクチンを開発し、運用していくかは永遠の課題であると言えます。いずれにしろ、この度亡くなられた方の御冥福をお祈りいたします。
肺炎球菌ワクチンも、大分一般的になってきておりますが、肺炎を起こす代表的な細菌の一つである肺炎球菌による肺炎発症を予防する目的で行います。肺炎球菌性肺炎は、重症化して致死的な状況に至ることも少なくないため、これを予防する意義は高いと言えます。ただ、これで肺炎にならないと誤解されている方がいらっしゃいますが、流石にそこまで夢のような効能は期待できません。肺炎を起こす原因は、肺炎球菌以外の細菌やウイルス、真菌、原虫など多種多様です。これらすべてを予防することは残念ながらできるわけではありません。
2013年に子宮頸がんワクチンが定期接種ワクチンに格上げされました。このワクチンは、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)に対するワクチンです。このときに、ワクチンの副反応で、多様な神経症状を呈するなどで社会問題に発展した経緯は記憶に新しいと言えましょう。
HPV関連神経免疫異常症候群:HANS症候群と名付けられていますが、この有害事象は必ずしもワクチンとの因果関係があったのか微妙な事例も少なからず、あったのではないかと考えらえています。
少なくとも、将来子宮頸がんで悩む人たちを減らすためにも、この子宮頸がんワクチンは大変意義深いと言えます。しかし、副反応で社会問題となるような状況に至り、このワクチンへの信頼は大きく損なわれてしまいました。何とかして信頼を取り戻し、このワクチンの安全な運用を模索していく必要があると思います。
最後に、話題の新型コロナウイルスのワクチンですが、現在製薬会社も、ワクチン製造に血道をあげているところですが、現段階では、その効果や安全性に関しては検証中という状況です。早急なワクチン導入は副反応などの問題で、子宮頸がんワクチンの二の舞の様になる危険もあり、慎重さが求められると思います。私は個人的に、このコロナワクチンの効果は限定的で、期待ほどのものではない恐れを抱いております。

2020年10月20日(火)

 ワクチン@
投稿:長野央希
当院でも10/12よりインフルエンザワクチン接種を開始しております。尚、65歳未満の方は10/26からになります。
ワクチン開始を踏まえ、ワクチンに関する話をいたします。
免疫学の父と言われるパスツールが「人工的に弱い病気を起こさせて、それに似た恐ろしい病気を予防する材料全体」をワクチンと呼ぶことを提唱しました。そのワクチンには、独力を大幅に弱めた生きた微生物を使う生ワクチンと、病原微生物を殺したり、毒素の活力を失わせたものを使う不活化ワクチンとがあります。ワクチンとは免疫の強化が求められます。この免疫には、抗体(免疫グロブリン)が微生物や、その毒素と特異的に結合することで、その活性を阻害する(中和)液性免疫と、マクロファージや好中球、細胞障害性T細胞といった白血球群によって微生物の潜む細胞自体を破壊する細胞性免疫とがあります。そして、ワクチンに期待される第一の効果は、液性免疫の獲得・強化にあり、とりわけ生ワクチンには後者の細胞性免疫を強く誘導する作用もあります。
とは言え、ワクチンを打ったからと言って、すぐに免疫が獲得されるわけでなく、感染防御に必要な抗体ができるのには最低一週間を要します。

こうしてワクチンによってもたらされる利益たるや、計り知れないものがあると言えます。
病気が起きてから、それに対して治療をすることは、見た目にも派手で、かつ治療効果が目に見えて分かりやすいのですが、ワクチンは病気が起きることを未然に防いでいるため、極めて効果が地味ではあります。しかし、、ワクチンがもたらしてきた功績は、抗生剤や抗ウイルス剤によってもたらされた功績を凌駕しているといっても過言ではないと思います。

2020年10月16日(金)

 大切なこと
投稿:長野央希
この度、京都府立医大のグループから、皮膚上での新型コロナウイルスの検出時間に関する報告がありました。
季節性インフルエンザ(A型)では凡そ1〜2時間なのに対して、新型コロナでは6〜11時間とのことです。また、金属やプラスチック上では、新型コロナは2〜3日検出されるという意味では、皮膚上でのウイルスの安定性が低下することが示されたと言えます。
ただ、通常のインフルエンザに比べて、大分長期間ウイルスが皮膚上に存在し得るという点で、我々が注意すべきことは、常に自分はウイルスに汚染したかもしれないと考え、指で目や鼻や口などの粘膜に触れないように注意することが大切と言えましょう。要は飛沫感染もさることながら、接触感染への配慮が極めて重要と言うことになります。
また、同グループはインフルエンザにしてもコロナにしても、80%エタノールによる15秒暴露によって、ウイルスは完全に賦活化するということも報告されています。つまり、手指のアルコール洗浄が極めて重要と言うことです。
また、これから冬場に食中毒として、しばしば話題になるノロウイルスについては、これまでに12日以上前にノロウイルスに汚染したカーペットを通じて感染が起きた事例の報告がありました。ノロウイルスは極めて感染力の高いウイルスでもあります。
ノロウイルスに関しては汚染した物の消毒処理などが大変重要ではありますが、新型コロナにしても汚染したであろう機材を次亜塩素酸で消毒することが大切です。(次亜塩素酸で体を洗うのはやめましょう)

これから、医学がさらに発展しても、ウイルスや細菌、真菌などの感染症から人類が解放される時代は望めないでしょう。しかし、感染症から身を守る術は、完全でないながらあります。それが手指衛生であり、環境衛生の整備であると言えます。新型コロナという、大きな問題を経て、清潔を保つことの重要さを再確認できたことは、不幸中の幸いであったと前向きにとらえ、これからのインフルエンザやノロウイルスの感染が本格化する季節に備えていきたいものです。

2020年10月12日(月)

 高齢者ドライバーの件
投稿:長野央希
昨日、池袋暴走事故の初公判が行われました。インパクトの大きい事件であっただけに、裁判の行方も非常に注目を集めております。事故当時は、「上級国民だから、罪が不問に付されるのでは?」とか「高齢者は皆免許を返納すべし」といったような内容のことが議論されていたことも記憶に新しいと言えましょう。
昨日の公判で89歳の被告が自分の運転操作ミスではなく、自動車の問題であったのではないかということで無罪を主張していることには驚かされました。遺族の心情や多くの国民感情を考えると、この状況で無罪を主張すること自体が、相当強靱な精神を有していないとできないのではないかと思われてなりません。暴走に関しては、警察の綿密な捜査が行われているでしょうし、私が詳細を知る由もないため、あーだこーだ言う資格もないと思いますから、意見をさしはさむことは控えます。ただ、御遺族のお気持ちは察するに余りあることだけは間違いありません。
しかし、この事故を含めて、高齢者が事故を起こすたびに、高齢者の免許返納義務の話が俎上に上がりますが、これはよく考えねばならない問題と言えます。確かに、都内の23区やその周辺のように公共交通網、とりわけ鉄道が充実しているところでは車は必ずしも必要と言えないでしょう。私も、4年間都内で働いている時には、車を持ってはいきましたが、あれば便利というだけで、なくても生活はできる状況であったと言えます。そういった恵まれた環境で生活している人たちからすれば、車の免許不要論が出てくることもうなずけます。ただ、そういった場所ではないところに住む人たちからすれば、全く状況が異なります。以前働いていた北海道の地方や、新潟の魚沼で、高齢者が運転できなくなった場合、どう生活をしろというのでしょうか?新潟市や、北埼玉といえ、状況はさほど変わらず、車への依存度が高いのが実情です。要は都内などの大都市の一部を除くと、車がなかったら、大変なことになるということを度外視して、高齢者の免許返納を論議すべきではないと思います。免許を返納させるのであれば、日々のスーパーなどへの買い出しや病院への通院を毎回タクシーにするのでしょうか?これらを公費とした場合、高齢者が増加していけばいくほど、その財源をどうするのでしょうか?
更に、高齢者と一派一からげに言いますが、大分色々な方がおられます。認知症が進行していたり、下肢の筋力低下が著しいような方は、運転すべきではないと言えますが、90歳になっても大変かくしゃくとしておられる方もいらっしゃるのです。高齢者が事故を起こすたびに、こういう話題になるのは、精神疾患の患者さんが殺人事件を起こした時の状況に似ていると言えます。精神疾患ではない人が殺人事件を起こす事例の方が多いのに、精神疾患を危険視する風潮がありますが、高齢者ではない中年や若者が事故を起こすことが多いのに、高齢者のみを危険視するのは、大分感情論に左右された議論と言わざるをえません。
高齢者の免許問題に関しては、免許を返納するのであれば、その代替となる交通手段をしっかり講じるなどの対策を練ったうえで冷静な議論をしていく必要があると思います。

2020年10月9日(金)

 トランプ氏
投稿:長野央希
トランプ大統領が退院したとのことです。
未承認のカクテル抗体療法を行ったり、レムデシビルを投与したりしている中で、SpO2の低下を認めたため、デキサメタゾンによると見られるステロイド療法を行ったとの由。ステロイドにより、当然解熱するでしょうし、呼吸状態も改善はしたでしょう。そういった病状の一時的な回復を認めたためか、外出までしておりました。これ自体、政府の方針をトップ自らが破っていることになりますし、ウイルスの排出量も多いような状況での外出という行動に良識を疑います。(もっとも、以前から彼に良識があるとは思っていませんでしたが)選挙で不利な現状を打破するために、一刻も早く選挙活動に戻りたいという焦りがあるのでしょうが、正直なところ、許されざる行為だと思います。コロナウイルスは、確かに風邪を引き起こす代表的なウイルスであり、そういう意味で風邪として軽視しきっているのでしょうが、米国では実際に20万を超えるコロナによる死者が出ております。これは、トランプ政権の無為無策というよりは、無関心、無知から適切な対応が取る気がなかったからに他ならないと言わざるを得ません。風邪の範疇を大きく逸脱している国家状況で、ホワイトハウス自体がクラスターと言える環境となっており、その責任はトップにあると言えます。感染防御をしっかり行っているとはいえ、自分の政治活動のために巻き込まれる運転手やエスピーといった人たちに感染が波及した場合、大統領はどのように責任を取るつもりなのでしょうか?米国は、曲がりなりにも民主国家であり、専制国家ではありません。国のトップのために、国民の命がないがしろにされるべき国家体制ではないことを、トランプ氏は理解しているのでしょうか?彼が、高い支持率を維持してきたことも、自分にとっては大きな謎でした。彼の対中政策があるからこそ、アジアの平和が保てているという論調を唱える人がいますが、甚だ疑問です。彼の政策(政策と言っていいのか分かりませんが)は、仮想敵国を作って、それと対決して、勝っているというアピールをする、いわゆる分かりやすい構図で大衆を扇動しているのだと思います。勿論勝っているというのは、本人がただ言い張っているだけに過ぎないのですが、だまされる人は騙されるのでしょう。米国のプロレスのWWEのように、傍から見ても分かりやすい抗争を勃発させて、民衆に面白そうに感じさせることには成功しておりますが、全く実がないと思います。
いずれにしろ、今回の一時外出の一事をとっても、彼の頭には選挙に勝つ以外のことはなく、国民に奉仕する、米国の未来に資するなどの意識が欠けていることを如実に示しているのだろうと思われます。
バイデン氏が良いのかは分かりませんが、少なくともトランプ氏が大統領として、ひいては国民一個人としての資質に大きな疑問を感じてしまいます。

2020年10月6日(火)

 最近のコロナの話題
投稿:長野央希
最近の新型コロナ関連の話題
(1)年明けには、新型コロナのワクチンを導入開始していくという政府の方針に関する報道がありました。
現状は、ワクチンの有効性も副作用や合併症も検証が不十分な段階であると言えます。ワクチン接種は公費で賄えるということですが、そもそも、新型コロナのワクチンにより終生免疫が得られるとは考えにくく、季節性インフルエンザの様に毎シーズンで予防接種を受けるのかどうかという議論も不十分で、導入に至る経緯において拙速な印象を抱かざるを得ません。ひとまず、早くワクチンを開始することで、国民を安心させたいという狙いなのかもしれんせんが、政府として手をこまねいているだけではないという、批判をそらしたいという気持ちも透けて見える気がしてなりません・・
(2)これから本格的に季節性インフルエンザの流行時期に入ります。感染症学会の指針としては、発熱時には新型コロナ、インフルエンザ両方共の検査が望ましいとしていますが、インフレンザ陽性の場合は必ずしも新型コロナの検査はせずに、インフルエンザの治療で経過を見ることもありであるというような趣旨の見解を出しています。
コロナの影響で、マスク着用の習慣がつき、手洗いの徹底がなされることで、季節性インフルエンザの流行を抑制できる可能性もあります。また、インフルエンザと新型コロナが合併した場合に、どのような経過をたどりやすいのか、重症化しやすいのかなどは注視していくべきではあろうと思いますが、現段階では未知数と言わざるを得ません。
(3)最近の話題では、やはりトランプ米大統領の感染ほど話題を振りまいたものはないかもしれません。春には感染予防で、抗マラリア薬を内服してみたり、最近までマスク着用を拒否し、トランプ支援者の踏み絵のような形でマスク着用の有無が取りざたされたりしておりました。高齢で肥満があり、重症化の恐れがあるということなのか、現状未承認のカクテル交代療法を行ったり、レムデシビルの投与を行ったりしております。一国のトップであるために、その時代で考えられる最先端の医療を施されたのか、新規治療の治験に、体を提供したのか、富豪として金に任せてありとあらゆる治療を要求したのか分かりません。米国は裕福で高い保険料を払う人には極めて高レベルな治療が行われますが、高くない保険料しか払えない人には、日本の医療から見て大分貧弱な医療のみしか受けられなかったり、場合によってはまともな医療が受けられないというシステムです。米国で新型コロナによる死者が20万を超えてしまっています。(毎年季節性インフルエンザでも1万超亡くなる国ではありますが)その中で、もう少ししっかりした医療を受けられたら救命できた人がどれほどいるのだろうかなど考えさせられます。
トランプ氏は報道では兵役を逃れたり、税金も払っていなかったり(フェイクニュースなのかどうか・・・?)と、それが真実としたら、大統領としては不適格と言えましょう。そもそも、国民としての義務を果たさない時点で、国民としての良識すら疑いますが、ひとまずどんな人であれ、まずは新型コロナからの速い回復をお祈りいたします。

2020年10月5日(月)

 音楽の力
投稿:長野央希
私は音楽が好きで、色々と聴いております。もともとはクラシックでモーツァルトやバロック音楽を好んで聴いておりました。その後、クラシックにメロディーラインが近いこともあってか、北欧系や独系のHR/HMを聞くようになりました。邦楽では鬼束ちひろさんをよく聴いています。
鬼束さんんは自分の弱さとか、負の面も含めてさらけ出して曲作りをされているように思えます。自分の弱さを表に出すということはとても勇気のいることだろうと思います。その勇気が曲に力を与えているのではないかと考えたりもします。時には、歌詞の意味がとらえようのないこともありますし、儚い内容なのに、不思議な圧倒されるような力を感じてしまいます。
仕事がつらい時など、酒を飲みながら、鬼束さんの曲を聴いていると、ぼろぼろ涙が出てくるのですが、その後大変すっきりして、翌日には辛いことなどないかのように働けているような気がします。
音楽の力という意味では思い出深いことがありました。2011年の晩秋頃だったかと思いますが、ワルシャワかチェコかの交響楽団の演奏会を聴きに行きました。予定の演奏も素晴らしかったのですが、アンコールでは『故郷』を演奏してくれました。その際に指揮者が観客に向かい、歌うように合図をしてこられました。
その年は、東日本大震災の起きた年でもあり、故郷を歌いながら、日赤の救護班で3月には石巻に、5月には釜石に行ってきた際に見た光景が色々とよみがえってきました。石巻では、原形がどうであったのかわからないような水没した街が広がり、釜石では水こそはけているものの、もともとの住居ががれきの山の様に連なっておりました。震災で多くの命が亡くなり、生き残った方にとっても、故郷の風景は思い出の中だけになってしまっている。そんなことを思うと、涙があふれて歌えなくなってしまいました。
それでも、楽団の粋な選曲に感謝の気持ちでいっぱいになりました。
音楽には、感情を揺り動かして、時に生きる希望や勇気を与えてくれる力があると思います。それは絵画や文章にも言えるでしょう。
私は医師という仕事をしております。口もうまくないですので、言葉で人に力を与えることはできませんが、患者さんが生きていて良かったと思えるような医療が出来ればと考えています。この域に達することはとても難しく、生きている間には到達できないようには思えますが、日々精進していきたいと思っています。

2020年10月2日(金)

 早まらないでください
投稿:長野央希
昨日、女優の竹内結子さんが亡くなられたというニュースを見て、大変驚かされました。自殺の疑いが強いということでした。あまり、テレビを見ない自分でも知っている女優さんで、しかもとても自殺しそうに見えない方でしたので、驚きもなお一層のものとなった感があります。
今年は芸能人の方々がコロナで亡くなられるケースもさることながら、自殺される方も多いように思われます。コロナによる先行き不安も一つの原因なのかもしれません。竹内さんの場合、1月に出産されたばかりで、産後うつのような状況であったのかは分かりませんが、芸能界の方々の重圧や精神的なストレスは我々一般人には計り知れないものがあるのかもしれません。
しかし、私のような医師という職業も、芸能界ほどではないとはいえ、常に大きなプレッシャーにさらされていると言えます。
時には、患者さんの命のために、自分の命と引き換えにしなければならないような悲壮感にとらわれることもあります。連日連夜病院から呼び出され、不眠が続き、極度の疲労状態になることも時にはあります。そういったときに、「楽になりたい」「深酒して、雪の中で寝ていたら…」などと考えてしまうことも一度や二度ではありませんでした。そんな時に生きなければと考えたのは、自分が助けられなかった患者さんに対して、申し訳が立たないと思えたからでもあります。例えば、自分より若くて、子供も小さいような白血病の男性の死を見てきました。生きたいのに生きれない人がいます。そういった人に礼を尽くすためにも、自分は生きれる間は生きなければと考えなおして、踏みとどまってきました。
 今年は、新型コロナという通常では経験しないような閉塞感の中で、思いがけず失職してしまったり、苦境に立たされている方々もおられると思います。そういった状況下で、うつ病を患う方もいらっしゃるでしょう。
自殺を考える方も様々な状況が考えられます。
うつ病からくる希死念慮であれば、鬱に対する適切な治療が行われることで、改善していく可能性が高いです。
実際の色々な悩みで生きていけないという思いに駆られている方であれば、どうか一呼吸おいてください。私も経験がありますが、辛い時や著しく疲労している時には視野が極度に狭まり、死ぬことにしか思いが至らなくなるかもしれません。そんな時に、すぐに行為に移すのではなく、一旦呼吸を置いてみてください。自分の辛い思いを外に発散するだけでも、心のおもりが少し軽くなります。家族や友人に連絡してみてください。また、今では自殺の相談に乗ってくれる窓口もあります。他人と話すことで、一人でしょい込んでいる重荷を軽くしてください。苦境にある時に「人間一人一人の命はかけがえのないもの」などという言葉はきれいごとにしか聞こえないかもしれませんが、せめて深呼吸して、「生きているのもまんざら悪いことばかりでもない」と思っていただければと思います。そして、もう少し余裕が出てきたら、自分の死で必ず悲しむ人たち(もしかしたら動植物も)がいることを考えてみてください。
どうか、自分を好きでいてあげてください。お願いします。

2020年9月28日(月)

 真実は一つ?
投稿:長野央希
私は以前からシェークスピアの作品が好きで読んでいましたが、とりわけて『マクベス』と史劇『リチャード三世』は何度読んでも迫力があって好きな作品です。『リチャード三世』で描かれるリチャード三世は己の利益のためには平気で人を踏み台にもし、殺人も犯してしまい、人の気持ちに配慮するようなことのない、いわゆる典型的なサイコパスの様に稀代の暴君として描かれております。近年、リチャード三世の遺骨が発見されたりと話題になりましたが、その後の研究で、リチャードは言われるほどの暴君でも悪人でもなかったのではないかと考えられるようになってきました。確かに、シェークスピアが生きていたのはチューダー王朝のエリザベス女王の治世下で、チューダー家はリチャード三世のランカスター家を打倒して、王座についておりますから、チューダー朝としては、自分たちの行為を正当化させるために、ランカスター家のリチャードをことさらに暴君として描く必要があったのであろうと思われます。
こういった事例は日本でも見られます。
鎌倉の鶴岡八幡宮の境内に白旗神社があります。ここでは源頼朝、実朝父子が祀られております。しかし、同じ頼朝の息子である二代将軍頼家は合祀されていません。鎌倉時代の史書である吾妻鏡では頼家は非常な暴君で、暗殺されても仕方がないような印象を抱かせられます。しかし、吾妻鏡は時の権力者である北条氏にとって都合よく記されている可能性を考える必要がありると思われます。頼家政権では比企氏などの有力御家人が権力を握り、北条氏は力を削がれてしまう恐れもあって、頼家を殺害し、その行為を正当化するため、頼家の暴虐を喧伝したのかもしれません。暗殺事件に北条義時や雅子がどこまで絡んでいるのかなど、考え出すと、推理小説の様な面白さもあります。
いずれにしろ、正史と言えるような政府刊行の歴史書も、その時の権力中枢にいる者たちにとって都合の良いように記載されてしまう可能性が高いと言えます。(勝者が歴史を記す)
流石に現代社会では、そこまでのことはないでしょうが、政治が常に清廉潔白ではいられない以上、国民に見せたくない事実を歪曲して報告したりという可能性はあるのだと思います。
また、真実は一つと言いますが、真実は、その人の立場によっては見え方が変わる場合もあります。勝者と敗者では、一つの真実が大きく異なってみえるかもしれません。
政府や権威者が語る事実が本当に真実かどうか、時には疑う必要もあるのだと思います。


2020年9月25日(金)

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