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 貧血
投稿:長野央希
貧血というと、大変ありふれた単語ではありますし、ある意味では最もなじみ深い症候群と言えるかもしれません。貧血とは簡単に言えば、赤血球の少ない状態を表しますが、一般社会では「ふらついて、倒れそうになった」などの事象があった際に「貧血が起きた」などと表現されたりします。これはいわゆる「脳貧血」を指していると思われますが、本来の貧血とは全くの別物でありますが、そういう意味でも貧血という言葉自体が、案外曖昧にしか意味を理解されていない可能性が高いように見受けられます。
しかし、貧血という症候群自体が案外と医療者の中でも十分理解されていないようなシーンにしばしば出会います。
貧血と言っても、その原因は極めて多種多様です。
@鉄欠乏性貧血A栄養性貧血B慢性炎症に伴う貧血Cビタミン系の欠乏による貧血D甲状腺機能低下症などのホルモン疾患に伴う貧血E膠原病に伴う貧血F血液系の悪性腫瘍(白血病、リンパ腫、骨髄腫など)G再生不良性貧血、骨髄異形成症候群などH溶血性貧血⓾腎性貧血J出血による貧血(外傷や固形癌からの出血など)K薬剤性
等々と思いつくものを書き出しただけでもこの有様ですので、貧血で一冊の教科書が出てしまうのも当然と言えます。
そんな中で、貧血に対して、特に検査はせずに漫然と鉄剤を投与しているのみの医師も少なからずおります。最近になって、腎性貧血に対する内服薬が出ました。本来であれば、エリスロポエチンというホルモンを調べたうえで、その不足を確認した慢性腎疾患の患者さんに投薬すべきものが、鉄剤で効果がないからと安易に貧血に使用されてしまうのではないかという懸念を強く持っています。腎機能障害の伴う貧血には、背景に多発性骨髄腫(形質細胞ががん化した、血液腫瘍)が隠れているような場合もありますので、腎機能低下の貧血で、詳しく調べもしないでという姿勢は厳に控えるべきと言えます。
貧血というありふれた症候だからこそ、多くの医師も軽く考えている節がありますが、非常に奥の深い病態ですので、丁寧な検査、原因検索が不可欠であると考えます。
このことは、自分に対する自戒ともなります。心不全などのいわゆるよくある症候群だからこそ、より慎重に対処しなければならないのだと思い、日々の診療につなげていきたいと思っています。

2021年3月29日(月)

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