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 薬剤製造過失事故
投稿:長野央希
今回、小林化工による抗真菌剤イトラコナゾール錠50『MEEK』に睡眠導入剤であるリルマザホン塩酸塩水和物が混入していたことで、死亡者まで出るような事故(事件?)となっております。これまで364人に処方され、128人に健康被害が出、内14人が自動車の運転中に意識消失をするなどして物損事故を起こしています。尚、死亡された方は、運転での事故によって亡くなったわけではないとのことです。
イトラコナゾールという抗真菌薬は、水虫(白癬)に使用されますが、血液内科疾患でも、しばしば使われる薬剤であるだけに、驚きを禁じ得ませんでした。血液疾患の患者さんは原病でも、治療のよってでも免疫不全状態となるため、日和見感染として、カンジダなどの真菌(カビ)や各種ウイルス感染を起こしやすくなり、予防的な意味でも抗真菌薬や抗ウイルス薬を投与されることが少なくありません。従って、このイトラコナゾールは血液内科的には大変なじみ深く、御世話になっている薬剤であります。
そんな中に、睡眠導入剤が混入すること自体が、???という状況です。
今回混入していたリルマザホン自体はさほど強い睡眠薬とも言えませんが、高齢の方であれば、2mgまでの使用にとどめておくべき薬剤にもかかわらず、5mgもの量が混入していたとのことでした。
今回処方されていた患者さんの年齢の内訳なども不詳ではありますが、もし高齢の方が多かったとすれば、当然、交通事故やふらついての転倒といった有害事象が多発しても不思議はないと言えます。また、睡眠薬によっては深い鎮静によって呼吸抑制も惹起される場合もあり、亡くなられた方の死因もしっかりと検死がされなくてはならないと思います。
全く違う薬物が混入するだけでなく、通常使用量を超えるような事態は、非常に重大な問題であるため、しっかり社内での製造過程でのミスの検証を進めていただく必要があろうと思いますし、繰り返されてはならない事故と言えましょう。
薬剤というものは、多くが人類の健康にとって、大きな恩恵を与えてくれていますが、色々な形での人的ミスが、場合によっては人の健康を害してしまう諸刃の剣になりえることを肝に銘じる必要があると改めて思い知らされました。医療者として、常に薬の良さと同時に恐ろしさも知りつつ、日々向き合う必要があると痛感します。

2020年12月14日(月)

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