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 一億総評論家時代
投稿:長野央希
私はあまりテレビを見ませんが、テレビをつけると、色々なコメンテーターが様々な持論を展開したりしているのを見かけます。なるほどと思うような内容もあれば、愚にもつかないと思うような内容のものもあり、時にはよくこれでギャラをもらえるもんだと思うような人もいます。
一方で、私はパソコンが苦手なので、ネット情報にも疎いのですが、ネットで、実名・匿名関係なく、多くの人が自説を発信しているのを見かけます。
言論の自由という意味では、多数の人が自己主張できるのは良いことではあろうと思います。ただ、その内容からすると、経験に根差していないような机上の空論の如きものが多いような気がしてなりません。皆が高邁な理想論を発信しているという意味では、国民皆評論家のような時代になっている感があります。
太平洋戦争時と日清・日露戦争時の大きな差は何かを考えると、大きな違いの一つとして、戦争に参加している指揮官や上級士官の「戦」の経験の有無にあるのではないかと思えてしまうのです。日清・日露戦争の時の作戦立案する将校は生身での戦争経験はないか、非常に少なかったかもしれませんが、作戦を認可、指導する指揮官陣は皆、幕末の鳥羽伏見の戦いや会津戦争、西南戦争という戦を経験しています。戦争の規模は小さいとは言えますが、それでも命のやり取りをする、いわば修羅場をかいくぐっているのは間違いないのです。ましてや同じ日本人同士で殺しあうという、拭えないような悲しみを身をもって体験してきたと言えましょう。こういった修羅場をくぐった人は、間違いなく戦場での独特の勘などがはぐくまれるのではないかと思われるのです。日露戦争は薄氷の勝利とは言え、あれだけの国力差の中で最終的に勝てたのは、痛みを伴う経験に根差した作戦指導の賜物であったのかもしれないと思うのです。一方で、太平洋戦争での戦争指導部は、上層部のごく一部のみ日露戦争に参加しているのみで、ほとんど「戦」を経験していません。本当の戦争の怖さと言ったものは戦地に行ってこそ身につくのかもしれません。そして、戦争の怖さや痛みを知るからこそ、どうやったら自軍にとって痛みの少ない作戦指導ができるのかといったことにも思いをはせることが出来るのではないかと思います。そのためには効率性や機械化などの要素も含まれてくるでしょう。太平洋戦争では上層部は多大な痛みを感じず、下級士官以下に多大な犠牲を強いて、最終的には大敗北につながりました。机上の空論で作戦を計画立案し、それを遂行していったことが、敗北に帰結してしまった要因ではないかと思われます。
個人的な話では、私は本当に医療崩壊寸前という地域で勤務した経験があります。一週間で総睡眠時間が10時間程度というような時期があったり、毎日病院から呼び出される、もしくは呼び出されるかもしれないという張り詰めた精神状態で生活をしていたため、このままでは疲労で倒れてしまうだろうという状態でした。勿論、修羅場というにはおこがましいとは言えますが、それでも身を削るような日々を送った経験があるため、そういった苦労もせずに、知識だけは豊富なくせに、あまり現実に根差していないような意見を述べてくるような同業者を見ると、時に怒りを感じてしまうのです。
皆が自分の意見を主張することは良いことですが、実行不能なようなことばかりをいうだけ言って、実際に行動しないのは無責任のそしりを免れないのではないでしょうか?
これからの時代は、様々な面でますます大きな変化が起きていくことが想定されます。そのために、意見を述べるだけではなく、実行力が求められていく時代になっていくのだと思います。

2020年11月27日(金)

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