医療系ドラマ |
投稿:長野央希 |
近年は、医療系ドラマや漫画が沢山、世に出てきます。 日頃から医療に携わっていますと、勤務医時代は夜間でも病院から呼び出されたりしますので、自宅にいる間は、少しでも医療から離れてのんびりしていたい思いから、あまり医療ドラマや漫画を見ることはありません。ごくたまに、テレビから流れるドラマを見ていると、荒唐無稽な内容のものから、なかなか現実的で、よくできた内容のものまで、様々あるものだなと感じておりました。ドラマでは当たり前ですが、劇的な事件やトラブルがおきたり、それを鮮やかに解決したりすることが多いです。そうでないと、視聴率は稼げないでしょうから、やむを得ないとは思いますが、通常の医療現場では、基本的にそうそう事件は起きません。頻回に事件があれば、医者も看護師も身が持たないでしょうし、病院としての信用問題にも発展するでしょう。 また、私がかかわってきた血液内科は、中心静脈カテーテルを留置するとか、胸腔ドレーンを留置するとかで、広い範囲の小手術のような処置はしますが、基本的には抗がん剤による化学療法などの投薬治療が中心になりますので、とても医者を主役にしたドラマは成り立たないでしょう。(血液ガンの患者さんを主役にしたドラマは様々なドラマがありますが) 血液内科の治療では、小さなほころびを放置することで、問題が大きくなり、治療が難しくなることがしばしばあります。感染や現病の増悪の兆候を早めに察知して対処することで、問題が顕在化しなかったり、大きな問題になることが未然に防げたりします。それこそが医療者の手腕が問われる部分ではないかと考えています。 現在の医療はガイドラインや治療指針がしっかりしており、その遵守が求められる場合が多いので、疾患自体の大まかな治療選択で悩むことは少なくなっている気はしますが、いざ治療開始後の合併症や副作用などのトラブルに関しては、医療者の裁量にゆだねられる面が多々あります。 派手な合併症が起きれば、それに対処する場合にある意味派手な治療が必要になりますが、合併症が些細なレベルで済む範囲で対処すれば、非常に地味な治療になります。しかし、患者さんの側からすれば、極力苦痛がないに越したことがないので、問題が小さく、早い段階で解決できれば、それに越したことがないわけです。 現実の医療では、ドラマのような派手さのない地道な医療で終始できれば、一番良いのだろうと思います。 そのような点で、開業医の役割も、生活習慣病の放置から心筋梗塞や脳梗塞を合併しないように、早め早めに何らかの対処をしたり、癌であれば、早期発見できるように努力することが求められるのであろうと考えます。 私は、華々しさのないけれども、着実で誠実な医療ができるように努めていきたいと思っております。 |
2020年7月13日(月) |
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