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 高齢者ドライバーの件
投稿:長野央希
昨日、池袋暴走事故の初公判が行われました。インパクトの大きい事件であっただけに、裁判の行方も非常に注目を集めております。事故当時は、「上級国民だから、罪が不問に付されるのでは?」とか「高齢者は皆免許を返納すべし」といったような内容のことが議論されていたことも記憶に新しいと言えましょう。
昨日の公判で89歳の被告が自分の運転操作ミスではなく、自動車の問題であったのではないかということで無罪を主張していることには驚かされました。遺族の心情や多くの国民感情を考えると、この状況で無罪を主張すること自体が、相当強靱な精神を有していないとできないのではないかと思われてなりません。暴走に関しては、警察の綿密な捜査が行われているでしょうし、私が詳細を知る由もないため、あーだこーだ言う資格もないと思いますから、意見をさしはさむことは控えます。ただ、御遺族のお気持ちは察するに余りあることだけは間違いありません。
しかし、この事故を含めて、高齢者が事故を起こすたびに、高齢者の免許返納義務の話が俎上に上がりますが、これはよく考えねばならない問題と言えます。確かに、都内の23区やその周辺のように公共交通網、とりわけ鉄道が充実しているところでは車は必ずしも必要と言えないでしょう。私も、4年間都内で働いている時には、車を持ってはいきましたが、あれば便利というだけで、なくても生活はできる状況であったと言えます。そういった恵まれた環境で生活している人たちからすれば、車の免許不要論が出てくることもうなずけます。ただ、そういった場所ではないところに住む人たちからすれば、全く状況が異なります。以前働いていた北海道の地方や、新潟の魚沼で、高齢者が運転できなくなった場合、どう生活をしろというのでしょうか?新潟市や、北埼玉といえ、状況はさほど変わらず、車への依存度が高いのが実情です。要は都内などの大都市の一部を除くと、車がなかったら、大変なことになるということを度外視して、高齢者の免許返納を論議すべきではないと思います。免許を返納させるのであれば、日々のスーパーなどへの買い出しや病院への通院を毎回タクシーにするのでしょうか?これらを公費とした場合、高齢者が増加していけばいくほど、その財源をどうするのでしょうか?
更に、高齢者と一派一からげに言いますが、大分色々な方がおられます。認知症が進行していたり、下肢の筋力低下が著しいような方は、運転すべきではないと言えますが、90歳になっても大変かくしゃくとしておられる方もいらっしゃるのです。高齢者が事故を起こすたびに、こういう話題になるのは、精神疾患の患者さんが殺人事件を起こした時の状況に似ていると言えます。精神疾患ではない人が殺人事件を起こす事例の方が多いのに、精神疾患を危険視する風潮がありますが、高齢者ではない中年や若者が事故を起こすことが多いのに、高齢者のみを危険視するのは、大分感情論に左右された議論と言わざるをえません。
高齢者の免許問題に関しては、免許を返納するのであれば、その代替となる交通手段をしっかり講じるなどの対策を練ったうえで冷静な議論をしていく必要があると思います。

2020年10月9日(金)

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