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 真実は一つ?
投稿:長野央希
私は以前からシェークスピアの作品が好きで読んでいましたが、とりわけて『マクベス』と史劇『リチャード三世』は何度読んでも迫力があって好きな作品です。『リチャード三世』で描かれるリチャード三世は己の利益のためには平気で人を踏み台にもし、殺人も犯してしまい、人の気持ちに配慮するようなことのない、いわゆる典型的なサイコパスの様に稀代の暴君として描かれております。近年、リチャード三世の遺骨が発見されたりと話題になりましたが、その後の研究で、リチャードは言われるほどの暴君でも悪人でもなかったのではないかと考えられるようになってきました。確かに、シェークスピアが生きていたのはチューダー王朝のエリザベス女王の治世下で、チューダー家はリチャード三世のランカスター家を打倒して、王座についておりますから、チューダー朝としては、自分たちの行為を正当化させるために、ランカスター家のリチャードをことさらに暴君として描く必要があったのであろうと思われます。
こういった事例は日本でも見られます。
鎌倉の鶴岡八幡宮の境内に白旗神社があります。ここでは源頼朝、実朝父子が祀られております。しかし、同じ頼朝の息子である二代将軍頼家は合祀されていません。鎌倉時代の史書である吾妻鏡では頼家は非常な暴君で、暗殺されても仕方がないような印象を抱かせられます。しかし、吾妻鏡は時の権力者である北条氏にとって都合よく記されている可能性を考える必要がありると思われます。頼家政権では比企氏などの有力御家人が権力を握り、北条氏は力を削がれてしまう恐れもあって、頼家を殺害し、その行為を正当化するため、頼家の暴虐を喧伝したのかもしれません。暗殺事件に北条義時や雅子がどこまで絡んでいるのかなど、考え出すと、推理小説の様な面白さもあります。
いずれにしろ、正史と言えるような政府刊行の歴史書も、その時の権力中枢にいる者たちにとって都合の良いように記載されてしまう可能性が高いと言えます。(勝者が歴史を記す)
流石に現代社会では、そこまでのことはないでしょうが、政治が常に清廉潔白ではいられない以上、国民に見せたくない事実を歪曲して報告したりという可能性はあるのだと思います。
また、真実は一つと言いますが、真実は、その人の立場によっては見え方が変わる場合もあります。勝者と敗者では、一つの真実が大きく異なってみえるかもしれません。
政府や権威者が語る事実が本当に真実かどうか、時には疑う必要もあるのだと思います。


2020年9月25日(金)

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