口腔ケア |
投稿:長野央希 |
私は、以前血液内科の医師として勤務しておりました。血液内科疾患の患者さんは、血液疾患そのもののためと同時に、抗がん剤やステロイド等による治療によって、免疫の低下している方が多いと言えます。 そのため、自分の上司も口腔内のケアの重要性について、盛んに患者さんへ説明しておりました。 口腔内のいわゆる雑菌と呼ばれるものは500〜700種類も存在しているといわれます。代表的な物でも、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、肺炎桿菌、インフルエンザ菌やカビであるカンジダなどそうそうたる顔ぶれと言えます。 通常では、無害な菌も、免疫不全状態になれば、宿主に牙を向いてくることがあります。強力な抗がん剤治療を行ったりすれば、口腔内や腸管の粘膜障害から、常在菌が感染を引き起こす場合もあれば、口腔内菌による不顕性誤嚥から肺炎を生じたりすることもあります。 そのため、血液疾患で強力化学療法を行うような場合には、齲歯(虫歯)も含めた口腔内菌や、痔が時に重症感染を引き起こし、命取りになりかねないため、それらの管理が極めて重要と言えます。 口腔ケアには、いわゆる歯磨きもさることながら、舌ブラシでの舌のケアも大切と言えます。このことも、先述の上司がしきりに患者さんに話をされておられたのが印象に残っております。 先月か先々月にイソジンが新型コロナに良いというような報道がされておりましたが、イソジンがコロナに有効というよりは、口腔内を清潔に保つことで、口腔内菌による二次性肺炎を予防できるだろうということなのではないかと思われます。 腸内細菌フローラと肥満や糖尿病との関連なども指摘されるようになってきた昨今、これまで軽視されてきた体内の常在菌が少しづつ注目されてきております。我々人間を含めた生物は体内の常在菌と共生しています。これらの多種の常在菌とよりよい関係を築くことが、ある意味健康でいられることの秘訣と言えるのかもしれません。 |
2020年9月14日(月) |
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