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 最近の話題から
投稿:長野 央希
評論家でタレントの山田五郎さんが原発不明がんにより永眠されました。
私は昔からTVをあまり見ないのですが、ほぼ定期的に見ていた数少ない番組が『タモリ倶楽部』でした。この番組に、時々山田五郎さんも出演されており、個人的に比較的なじみ深い芸能人の方でした。
原発不明がんは、名前の通り、原発巣が判然としないもので、病理による癌種も様々という、色々な悪性腫瘍の雑多な疾患群と言えます。
自分はかつて一度原発不明がんの診療をしたことがありました。80代の慢性骨髄性白血病(CML)で治療中のかたでしたが、CMLの治療自体は順調で、このまま天寿を全うできるであろうと考えていたところ、突然右頸部から峡部にかけて腫脹を認めるようになりました。当初は熱感もあり、発熱もしていたため、蜂巣炎のような病態を疑い治療しておりましたが、翌週には腫脹が明らかに腫瘤となっていることを受けて入院精査としました。結果的に様々な精査の上で原発巣の分からない癌で、原発不明がんと診断せざるを得ず、その旨、本人とご家族に病状説明をしました。すでに90歳に近い御高齢のため、強力な抗がん剤治療もままならない状況で、急激に病状が悪化していき、亡くなられました。
原発不明がんというのは様々ながんの総合疾患群であるため、まだまだ不明な面も多く、治療法も確立されていないのが実情です。それでも、固形癌の1〜5%が原発不明癌であるともいわれており、決して非常に稀なものというわけでもありません。しかし、雑多な疾患群であることによりなかなか研究も進みにくいという歯がゆさもあります。原発不明がんも、より詳しいことが分かってくれば、恐らく疾患名自体も変更されていくのでしょうが、できるだけ早めの研究の進歩と治療法の確立を願わずにはいられません。

千葉県柏市で看護師が点滴に糞便を混入させて、患者を死に至らしめた疑いで逮捕されるという事件がありました。現状は看護師は否認しているようで、今後、捜査が進んでいくものと思われます。
私がシニアレジデントのころに、自分の患者さんが日曜に急に発熱し、病棟から自分のところに電話がありました。その日は、他の病院に当直に行っていたため、電話を受けても病棟に駆け付けるようなわけにもいかず、血液培養採取の上で、抗生剤の点滴を始めてくれるように指示をして、何かあれば院内の当直医に相談するように伝えて電話を切りました。
翌日、朝早めに病棟に行ってみると、その患者さんはすでにショックバイタルとなっており、いわゆる急変という状況でした。救命措置を行っておりましたが、結局、救命できないという非常に残念で悔しい結末で、未だに、その時のことを思い出すと、悔しさで泣きたくなります。結果的に血液培養からアシネトバクターが検出されましたが、明らかな感染源は不明という結果でした。原因不明の食思不振でしたので、点滴を継続せざるを得ない状況でしたので、感染源は点滴のルート以外には考えにくい状況でした。あの当時は、その病院では点滴をするのは医師の仕事でしたので、自分か、その他の当番医が、不潔な方法で点滴を行ったのだろうか、点滴の管理で、何か菌が混入するような状況があったのだろうか、と未だに考えることがあります。ただ、その時の病棟スタッフは優秀で信頼できる人が多かったため、少なくとも意図的に異物を混入するようなことはなかったと信じています。
そういうわけで、今回の点滴に糞便を入れるというのとは、次元の違う話ではあるのですが、中心静脈カテーテルではなくても、点滴に異物が混入されれば、敗血症で、急激に病状が悪化するものであることは肌で実感しております。

あの時の教訓は、点滴や尿道カテーテルを留置している人が発熱したら、極力早急に入れ替えることでしたので、その後の自分は、それをできる限り実践してきました。血液内科時代は、多くの人が中心静脈カテーテルでの点滴管理を行うのですが、発熱した場合、発熱性好中球減少症に対するガイドラインがあるので、それに沿って抗菌薬、抗真菌薬の投与を開始しますが、熱が下がりにくい場合は、できうる限り中心静脈の抜去や入れ替えを行っていました。

もうひとつ点滴に異物を混入するということでは、母親が子供の点滴ボトルにペットボトルの飲料水を混入させることで、退院を先延ばしにさせていたという、代理ミュンヒハウゼン症候群が疑われた事例が思い出されました。もっとも、この場合は、子供の病状を悪化させることで、病気の子供の面倒をみる献身的母親像を作り出そうという狙いが透けて見える点で、今回の事例とは全く異なりますが。
殺意があったとして、何故薬物やカリウムではなく、糞便を使用したのかという点は、これから捜査の進展で分かってくることではありましょうが、この件で、自分のかつての苦い記憶が思い出される結果となり、色々な意味で、切ない事件ではあります。

連日、厳しい暑さが続いております。スーパーエルニーニョの影響なのか、7月とは思えない酷暑となっており、本日は都内で400人超がすでに熱中症で搬送されているという話です。
これからが本格的暑さになるはずであり、どうか皆様も熱中症に対してしっかりと対策していただければと存じます。

2026年7月23日(木)

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