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 メッシ、マラドーナ論争
投稿:長野 央希
昨年12月に、カタールW杯で、アルゼンチンが優勝し、これによりメッシがクラブレベル及び代表レベルでの優勝を勝ち取ったことで、メッシとマラドーナとどちらがすごいかというような論争にひとまず結論が出たかのような論調になったのも記憶に新しいと思います。
二人とも、すごい選手であることは間違いないですが、個人的にはメッシの方が好きではあります。だからと言って、メッシの方が偉大であるとは言えないと思っています。
マラドーナは麻薬を含めて、多くの過ちを犯してきました。それでも、アルゼンチンの国民や多くのサッカーファンが彼を許し、愛してきたのは間違いのない事実です。彼の愛される所以というのは、やはり天真爛漫さと、子供がそのまま大きくなっ多様な陽気さ、困った人を放っておけないような親分肌な所などの性格的な部分が大きいといえます。と同時に、歴史的な面も大きいと思います。
まず、メキシコW杯でアルゼンチンが優勝した時は、その直前にフォークランド紛争で英国に対して一敗地にまみれていたタイミングでした。そんな中、イングランドに対して、「神の手ゴール」や「五人抜きゴール」で勝利を収めました。これはスポーツという代理戦争によって、フォークランド紛争の敵を討ってくれたというような心境に、アルゼンチン国民がなったとしても不思議ではありません。そのまま世界一を勝ち取ったことは、敗戦で打ちひしがれた国民をどレほど勇気づけたかは測り知れません。
その功績は、恐らく日本の第二次世界大戦の敗戦後に、日本人に大きな勇気を与えた野球の巨人や長嶋茂雄、ボクシングの白井義男などと同じような位置づけかもしれません。
長嶋さんに関しては、純粋な野球の選手としての成績などでは、もっと上の選手はたくさんいるのですが、日本の野球人を代表する存在であり続けているのは、高度経済成長でいかに多くの日本人を勇気づけたかということなのではないかと思われます。
恐らく、マラドーナもアルゼンチンにおいて、そのような存在なのかもしれません。加えて、彼の場合は、ナポリというクラブチームで二回のスクデットを勝ち取ったことも歴史的な英雄となるようそうなのではないかと思います。イタリアンのセリエAでは、基本的にトリノやミラノといった裕福な地域のチームが強いのは当然でした。深刻な南北の格差がある中で、貧しい南部の都市であるナポリで、金満チームのユベントスやACミランなどを破っていったことも、イタリアの社会問題に大きなくさびを打ち込むような業績だったのかもしれません。
こうした貧困格差などで虐げられているような気持になっていた人をも勇気づけたのかもしれません。
黒人差別の激しい時代で、世界1となったペレと、上記のようなマラドーナは、サッカーを超えた歴史的な存在なのだと思います。

いずれにしろ、私は子供のころにマラドーナのプレーを見ることができ、今に至るまでメッシのプレーを見ることができるという幸福に恵まれたことを感謝しないわけにはいきません。

2023年2月27日(月)

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