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 埼玉立てこもり事件
投稿:長野央希
先日、埼玉県内で医師の男性を人質として、自宅に立てこもり、少なくとも二人に傷害を加え、一人を殺傷したという事件が発生しました。
亡くなった医師の方は、その地域の訪問診療に、多大な貢献をされており、かなり人望、評判ともよろしいような方であったようで、その方の御家族にとってはいうに及ばず、その地域にとっても甚大な損失であると言わざるを得ません。
確かに、医療者と患者さんとの間に、十分な相互理解が得られず、不信感を抱かせるようなことも起きうるのが現実ではあります。とはいえ、不信感があるからと言って、こういった殺傷事件を起こすというのはもってのほかであり、許されない蛮行と言えます。こういった事象が増えてくれば、訪問診療そのものを放棄する医療機関も増え、結果的に地域医療の崩壊につながっていきかねないと思います。

今回の事件の犯人に関しては、詳細な部分がよく分かりませんので、あまり無責任なことも言えませんが、母親に対しての孝行の気持ちは篤いものがあったようではあります。その気持ちが過剰すぎることで、以前から周囲、4とりわけ医療機関との軋轢が繰り返されていたようです。
親への孝行は大事ではありますが、行き過ぎる場合、何か別の問題を抱えているような可能性も考えざるを得なくなります。
いわゆる親離れ、子離れが出来ているかどうかという問題です。
精神的に未成熟な親の場合に、子供が自分のもとを去ることに対する寂しさに耐えられないで、子供の独立を阻んでしまうようなケースがしばしば見受けられます。また、子供が自分を頼ってくることで、「人から必要とされている」という気持ちが、自分の存在意義を確認できるという安心感につながっている場合もあります。
一方で、子供が親離れをすることは絶対的に必要不可欠なことであるものを、それがなされないということ自体が不自然であり、結果的に子供の精神的かつ社会的な成長をストップさせてしまい、未成熟なまま、年齢を重ねるという事態に陥ってしまうと言えます。
また、現代社会において、自己愛(所謂ナルシシズム)の問題も重大であります。自分や自分の仲間と言えるものを愛する気持ちは必要です。自分を愛せなければ、他人も愛することは難しくなります。しかし、その自己愛が過剰となると、自分や自分の仲間を侮辱された、あるいは傷害を加えられたと認識した場合、一気に他者への攻撃性が増してしまう傾向があります。
特に、自分の殻に閉じこもるような状況の場合、このような自己愛が肥大化していってしまいかねません。
今回は、こういった自己愛が他人から傷つけられたと認識して、このような犯行に至ってしまったのではないかと思えてなりません。
先月の大坂のクリニック放火事件も、根は同じなのかもしれ前ん。
自己愛の問題は、恐らく、これからいっそう多様な問題を起こしてくる可能性があります。パソコン社会となり、人間同士の直接的な接触が少なくなれば、なるほど、自分の殻に閉じこもり、社会性が失われ、いびつに肥大化した自己愛が顕在化していくのではないかと危惧しています。

このような親離れ子離れの問題や自己愛の問題が、社会の基盤を崩壊させていくことになりかねないという漠然とした不安と恐怖を感じています。

2022年1月31日(月)

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