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 猛暑
投稿:長野央希
連日、厳しい暑さが続いております。寺泊で38.8℃と全国第一位の暑さを記録し、新潟市内も37℃台まで気温が上昇しております。私も、毎日、屋外で発熱外来を行っておりますが、長袖の感染防御のガウンを着て、サージカルマスクにN95マスクをつけ、フェイスマスクやゴーグル、ゴム手袋を着用しておりますと、信じられないような汗をかきます。一人の診療が終わるころには、手袋の指先は汗だまりと化し、ぐじゅぐじゅ音がしますし、指が汗でふやけてしまうというような状態です。もはや、体中の水分を搾り取っているように感じます。
一時、発熱外来希望者数が下火になっておりましたが、ここ3週間で再び増加に転じ、時には午前中の1時間半、午後の2時間などの様に、ぶっ続けで屋外労働をしておりますと、かなり疲弊します。患者さんが立て込めば、当然水分補給している時間がなく、自分自身で、熱中症の前駆症状であろうと思うような自覚症状を認識することも少なくありません。
まずは、字を書いていると、手が震えるようになります。そして、握力が落ちるのか、やたらと物を落とすようになり、患者さんの問診中に、ふわふわするような浮遊性のめまいが生じてくると、流石にまずいのではないかと思うようになります。また、それをこらえていると、徐々に過換気の様になってくる場合があります。ただ、この過換気に関しては、マスクの通気性の問題もあるかもしれません。発熱外来を継続するようになって気付いたのですが、サージカルマスクは雨や汗で濡れると、著しく通気性が悪くなるのです。汗でマスクがぐしょぬれになることで、通気も悪くなり、加えてN95マスクも装着しているために、呼吸困難感が増強し、結果的に過換気のようになることも予想されますし、熱中症の症状として過換気になっている可能性もあるかもしれません。恐らく、この段階を経て、尚、水分補給をしなかったりすれば、熱中症としての発熱、頭痛などをきたしてくるのではないかと思われます。いずれにしろ、屋外で長時間にわたり重装備の発熱外来を行うことは、自分にとって、ほとんど修行の様に感じられますが、この修行を耐えると、何かしら成長できるのではないかと思いつつ、日々過ごしております。

そんな猛暑の中、また福岡の保育園での送迎バスに置き去りにされた5歳のお子さんが熱中症で亡くなるという痛ましい事件がありました。御両親や兄弟、親類の方々の悲しみや怒りは、想像を絶するものがあります。9時間以上バスの中に閉じ込めらることの恐怖、暑さと脱水による信じがたい苦しみ、一人で過ごす孤独感、寂しさ、そんなことを考えると、可哀そうで、涙が出てきます。
発熱外来で使用している、物置の中は、扉を開放して、扇風機をかけていてすら、日中は40℃を超えます。それが密閉されていたら、60℃にはなるのではないかと思われます。ましてや、鍵をかけたバスの内部など換気もされないわけで、恐らく50℃や60℃になっていたのではないかと想像します。
そんな状況で、短い人生を終えなければならなかった子供を考えると、この園の園長の責任は極めて大きいと言わざるを得ません。
それでも、この園の園長や保育士には、それぞれの人生や生活や家族があります。亡くなった子供の遺族が、園長らに対して、強い恨みや怒りを感じるのは当然ではありますが、我々部外者が、園長以下の人たちを興味本位で罵倒したりすることは厳に慎む必要があると思います。我々はこの加害者となる人たちの人間性や事件の経緯を何も知らないと言ってもいいわけで、それなのに、正義感を振りかざして、私生活を暴いたり、糾弾するのは、何か違和感を感じてしまいます。毎年毎年、繰り返される子供の車中置き去りによる死亡事故を見るにつけ、どうして、こういった類の事故が無くならないのかと不思議に思いつつも、言い換えれば、自分も同じような過ちを犯す可能性もあるような、他人ごとではないという認識を持つ必要があるのだと思います。

2021年8月3日(火)

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