戦争の変遷(3) |
投稿:長野央希 |
メディアの使用のうまさということで言うと、ビンラディンのアルカイーダやイスラム国(IS)は極めて巧みであると言えます。 そもそも、テロというのは、民衆を恐怖に陥れることが一つの目的であり、そのような意味では、9.11の同時多発テロの旅客機がビルに飛び込んでいく映像は、ハリウッド映画の比にならないような恐怖と驚愕を世界中に与えただけでも、彼らの目的は十二分に果たせたと言えましょう。それに応じた米国政府は、武力でのアルカイーダ征伐を行いましたが、目的は遂行されているとはいいがたい状況であります。(ビンラディンは殺せても、その思想は脈々と息づいています) また、ISもメディアを活用することで、信者を今も増やしております。 もともと、イスラーム教は牧師や司教、僧侶というものが存在しません。法学者はいますが、民衆に教えを垂れるということはあまりないようですので、そういう意味で、イスラームの教えに興味がある人が、インターネットでの活字や動画を通して、コーラン(クルアーン)、ムハンマドの言行録を学び、帰依していきやすい宗教であると言えます。そういった意味で、イスラームはネットとの親和性が高いのですが、それを更に巧妙に使っているのがISです。時に残虐な映像も流しつつ、民衆の心をとらえていると言えるのかもしれません。現在は、シリア国内でもイラク国内でも、ISは劣勢に立たされております。今回のISはこのまま討滅されるのかもしれませんが、明らかに彼らの思想を受け継いだ第二、第三のISが遠からず、生まれ続けていくことは想像に難くありません。 私は個人的にはイスラーム文化やその歴史に関心を持っておりますので、何とか、もう少し欧米各国や日本も含めて、イスラーム独自の思想に理解を持ってもらえればいいのにと感じたりしています。 テロリストは今や拠点を持たずして、SNSなどのメディアを通して、世界各地で、ばらばらに存在しつつも、目的を一にして行動していくという流れは、今後更に拍車をかけていくことでしょう。テロとの戦い一つを考えても、見えざる敵が、遠くにも、場合によっては、極めて身近にも存在し得る時代と言えます。社会不安や不満の強い時代になればなるほど、そのはけ口として、テロ活動に身を投じていくような人間が増えていくでしょう。 もはや、戦争は相手の国あっての戦争ではなくなっていくのかもしれません。不満分子がテロに走るようになれば、いつでも自分がテロとの戦争に巻き込まれかねないという危機感を持つ必要があるのかもしれません。 テロは無くならないかもしれませんが、テロ活動を行う人を減らすことは可能だと思います。社会への不満分子を減らすことが重要なのだと思います。 倉廩実ちて礼節を知り、衣食足りて栄辱を知ると言いますが、生活の安定なくしては、治安の維持は難しいと言えます。コロナの影響で、社会不安が広がることは、間接的に治安の悪化やテロの温床となりえることを考えておく必要があります。 政府は金銭的な補償を小出しに行っていますが、むしろ、安定した職の供給がなされなければ、焼け石に水になりかねないのではという危惧を抱いております。 |
2021年6月9日(水) |
<< 戦争の変遷(2) 2021.6.8 |
欧州選手権開幕 >> 2021.6.14 |
はじめのページに戻る |