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 差別と言論の自由
投稿:長野央希
英国のエリザベス女王の夫君であるフィリップ殿下が逝去されました。99歳という年来を考えると、大往生と言えると思いますが、世界的に殿下を惜しむ声明が出されています。
先月はヘンリー王子メーガン夫妻がインタビューで英王室内で差別を受けたというような趣旨のことを語り、特に米国内で英王室への風当たりが強くなっていました。
もっとも、英国の王室は、これまで相当数のスキャンダルを起こしつつも、大過なく今に至っておりますので、今回の件も、年月とともに風化されていく可能性が高い気はします。そもそも、現在の英国王家であるウィンザー家(サックス・コバード・ゴータ家)はヴィクトリア女王が即位するまでの王で、真面目な人はジョージ三世のみだったと言っても過言ではないような状況です。特にジョージ四世は放蕩三昧といっても良いくらいの王でした。ジョージ三世は謹厳実直で、農地の視察にもたびたび足を運び、ファーマー・ジョージと呼ばれるほどの人でした。ただし、しばしば精神に異常をきたし、政務をとれない時期が長く、息子のジョージ四世が摂政として補佐していた中で、ある意味好き放題していたと言えましょう。
王様は真面目であると人気があるかというと、そうでもないようで、チャールズ一世は真面目で、妻や息子を大切にするような人ですが、国民からは不人気で、最終的に清教徒革命で処刑されます。一方で、その息子のチャールズ二世は陽気で、沢山の愛人を持ちつつも、国民受けは良かったようですので、時代時代の雰囲気などもあるのでしょう。
いずれにしろ、英国の王室は、御自身が品行不良であったり、あるいは配偶者が問題のある人だったりという状況で、現王室のメンバー全員に、人間としての模範を求めるのは酷なのかもしれません。
そんな英王室を離脱したヘンリー夫妻の差別発言は様々な波紋を呼び、ジャーナリストもメーガンよりの人もいる一方で、英王室の肩を持つ人もおります。差別やいじめの問題は極めてデリケートな場合もあります。身体的ないじめや差別は分かりやすいのですが、精神的な差別やいじめは、言った言わないの世界にもなりえます。更に、その発言をした側には差別的な感情がなくても、言われた方が差別を受けたと感じれば、差別が成立してしまいます。殊に、米国では建国から常に奴隷制の問題や開拓時代の先住民との衝突などもあり、国の歩みに差別がついて回っていたような国ですので、その反省に立って、極めて差別に対して敏感になっているように思われます。時には、こんな表現まで差別に当たるのかというような規制も入ります。
現代は、いわゆる「弱者」が差別被害を訴えれば、、世論・マスコミや一部の政党が弱者の味方として、差別のあったこと自体やその内容をあまり検証することもなく「強者」を弾劾する風潮が強い時代です。「弱者」が泣き寝入りしなくて済むという意味では素晴らしいと言えますが、一方で、「強者」が冤罪として、社会的に抹殺されかねないような恐ろしさも内包していると思います。痴漢の冤罪も、女性側が仮に被害を受けていなくても、被害を受けたと言い張れば、男性側にとっては大きく不利な状況に陥ります。実際に、私が都内で働いている時に、友人が痴漢の加害者として扱われそうになっていたのを見て、しばらくは恐ろしくて、満員電車に乗るのを控えたことを思い出します。
次元は違う話ではありますが、差別は許されない問題ではあります。とはいえ、いわゆる「弱者」が常に正義で、かつ正しいことを証言しているとは限らないにもかかわらず、弱者が差別を受けたと言えば、自動的に強者が裁かれることには警鐘を鳴らしていく必要がある気がしてなりません。そして、差別用語という観点で、自己規制をしていくうちに、ものをいうことが出来なくなっていくのではないかという懸念もあります。
恐らくいくら法で規制しても、差別は根絶できないでしょう。
最終的にはすべての人間が相手に対して思いやりの心を持ち、相手に対する基本的な配慮を忘れないようにすることの他に差別やいじめをなくす方策はないのだと思います。


2021年4月13日(火)

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